敷金診断士 法令系 第七章 請負契約

第1節 民法(請負契約)

一. 請負契約とは

請負契約とは、当事者の一方 (請負人) が、 ある仕事を完成することを約し、相 (注文者) がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することによって成立する契約である。

二. 注文者の義務

1. 報酬について

① 報酬支払義務

注文者は、報酬を、完成させた仕事の目的物の引渡しと同時に支払う必要が ある。ただし、物の引渡しを要しない請負契約の場合は、業務終了後に報酬を 支払う。

②注文者が受ける利益の割合に応じた報酬支払義務

次の場合において、 請負人が既にした仕事の結果のうち、 可分な部分の給付 注文者が利益を受けるときは、 その部分を仕事の完成とみなされる。そのた め、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求できる。

a) 注文者に帰責事由なく仕事の完成が不能になったとき

b) 請負が仕事の完成前に解除されたとき

2. 請負人が第三者に損害を与えた場合の責任について

請負人が仕事中に第三者に損害を与えた場合、 注文者は、原則として損害賠償責 任を負わなが、 注文または指図に過失があった場合には、責任を負わなくてはならない。

三. 請負人の義務

1. 仕事完成義務

請負人は、契約に定められた時期までに仕事を完成させなければならない。 ただし、必ずしも自分自身で完成させる必要はなく、下請負も可能である。

2.目的物引渡し義務

契約の目的が、物の製作である場合、請負人は完成した物を注文者に引き渡さなければならない。

3. 担保責任

① 担保責任の内容

完成させた仕事の目的物が、その種類 品質において契約内容に適合しない場合、請負人は、仕事完成義務の不履行を理由とした担保責任を負う。この請負人の担保責任には、売買契約の担保責任の規定が準用されるため、 注文者は、請負人に対して、原則として、次の請求をすることが可能である。

① 履行の追完の請求

※修補に過分の費用を要するときは、取引上の社会通念に照らして不 能と扱われ、履行不能の規定に従い、履行の追完請求はできない。

②代金の減額の請求

③損害賠償の請求

④契約の解除

②種類 品質に関する担保責任の期間の制限

注文者は、目的物の契約不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に 通知しないときは、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額 の請求 損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、引渡時(引渡し不要の場合は、 仕事終了時) において、請負人が不 適合を知り、 または重大な過失によって知らなかったときは、 この期間制限の 規定は適用されない。

四. 請負契約の解除

1. 注文者の解除

請負人が仕事を完成する前ならいつでも、損害を賠償して請負契約を解除できる。

2. 請負人の解除

注文者が破産手続き開始の決定を受けたとき、 請負契約を解除できる。

第2節 担保責任の特例

一. 品確法

請負契約上の仕事の目的物の欠陥に対する補償としては、民法上、請負契約の担 保責任が定められているが、多額の対価を要する住宅の請負については、注文者の 保護として不十分である。 そこで、より厚く注文者の利益保護を図るため、住宅の 品質確保等に関する法律 (品確法) が制定され、 請負の担保責任に関する特例がお かれた。

1. 適用対象

売買契約の場合と同様である。 「新築」 とは、 新たに建設された住宅で、まだ人 の居住の用に供したことのないものをいい、 建設工事の完了の日から起算して1年 を経過したものは除かれる。 また、 「住宅」 とは、人の居住の用に供する家屋又は 家屋の部分をいう。 なお、 一時使用のため建設されたことが明らかな住宅について は、この規定は適用されない。

2.品確法の瑕疵担保責任の対象部分

売買契約の場合と同様、 下記の2つの部分である。

① 住宅の構造耐力上主要な部分

住宅の基礎 基礎ぐい、 壁、柱、 小屋組、 土台、 斜材 (筋かい、 方づえ、 火 打材その他これらに類するものをいう。)、 床版、 屋根版、 又は横架材 (はり、 けたその他これらに類するものをいう。) で、 当該住宅の自重若しくは積載荷 重、 積雪、 風圧、 土圧、 若しくは水圧又は地震その他の振動若しくは衝撃を支 えるもの

② 雨水の浸入を防止する部分 (屋根、外壁等)

a. 住宅の屋根若しくは外壁又はこれらの開口部に設ける戸、 わくその他の 建具

b. 雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち、当該住宅の屋根若しく は外壁の内部又は屋内にある部分

3.品確法の瑕疵担保責任の内容

① 瑕疵担保責任として請求できる内容

新築住宅の注文者は、請負人に対して、次の請求をすることができる。

a) 債務不履行による損害賠償請求

b) 催告による解除

c) 催告によらない解除

d) 履行の追完請求

e)報酬減額請求

②瑕疵担保責任の請求に必要な手続

請負人が瑕疵のある目的物を注文者に引き渡した場合、注文者がその瑕疵を 知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その 瑕疵を理由として、 履行の追完の請求、 報酬の減額の請求 損害賠償の請求及 び契約の解除をすることができない。もっとも、 目的物の引渡しの時に、 請負人が瑕疵の存在について悪意又は重 過失である場合は、 上記期間制限は適用されない。

③期間

引渡しから10年の担保責任を負う (特約により20年まで延長可)。

④特約

注文者に不利な特約は無効となり、 品確法の規定による(片面的強行規定)。

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