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第1節 民法 (委任契約)
一. 委任契約とは
委任契約とは、ある人 (委任者) が、 法律行為を相手方 (受任者) が承諾することによって成立する契約をいう。 法律行為以外の事務の委託をする場合についても委任の規定が準用される (準委任)。
二. 委任者の義務
1. 報酬について
委任契約は、原則として無償契約である。すなわち、委任者には報酬支払義務が 生じない。ただし、特約(報酬を支払う)をすれば、報酬支払義務が生ずる。 ※「委任者に帰責事由なく委任事務が履行不能になったとき」又は「委任が履 行の中途で終了したとき」は、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬 を請求することができる。なお、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約束した 場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同 時に支払わなければならない。
2. 事務処理に必要な費用について
受任者の請求により、前払いしなければならず、受任者が立替払いをしたときは、 利息を付けて償還しなければならない。 また、受任者が事務処理に必要な債務を負 担したときは、代わりに弁済するか、 債務が弁済期前なら相当な担保を提供する義 務を負う。
3. 損害について
受任者が委任事務を処理するにあたり、 自己に過失なく損害を受けた場合には、 委任者はその賠償義務を負う。 この委任者の責任は、無過失責任である。
三. 受任者の義務
1. 受任者の注意義務
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、 委任された事務を 処理しなければならない。 この注意義務は、 善管注意義務と略される。 善管注意義 務とは、受任者の職業、地位、能力等において一般的に要求される平均人としての 注意義務のことをいう。 この義務は、委任契約が無償の場合にも、受任者に課せられる。
2.受任者の自己執行義務
受任者は、原則として、自ら事務を処理しなければならない。委任契約は、委任 者と受任者の信頼関係を基礎としているからである。しかし、a) 委任者の許諾が ある場合、b)やむを得ない事由がある場合には、復受任者を選任することができる。
3. 委任者への報告義務
受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、 委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
4. その他の付随的義務
① 事務処理過程で受け取った金銭等の委任者への引渡義務
②自己名義で取得した権利を委任者に移転する義務
③委任者に渡すべき金銭等を、 自己のために消費した場合の利息支払 損害賠償義務
四. 委任契約の終了
1. 解除による終了
委任契約では、各当事者は、 相手方に債務不履行がなくても、 また、 相手方に不 利な時期でも、いつでもその解除をすることができる。 その際、 解除の効果は将来 に向かってのみ生じる。ただし、 ① 「相手方に不利な時期に委任の解除をしたとき」、又は、②「委任者 が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く)をも目的とする委任を解 「除したとき」は、原則として、 相手方に生じた損害を賠償しなければならない。 なお、やむを得ない事由があったときは、 損害賠償は不要である。
2. 終了事由の発生による終了
委任契約は、次の終了事由の発生によって終了する。
死亡破產手続開始決定後見開始の審判委任者終了終了終了しない終了受任者
